価値多元的民主社会の構成員が有すべき意思決定能力とはいかなるものか,そのような意思決定能力の育成に社会認識教育はいかにかかわるべきか,特に学習内容の構成という観点から授業をどのように構想すべきか,という一連の問題を探求している。そのために,ドイツの政治教育論とその展開を分析し,英米の社会科教育論の強い影響のもとにある日本の意思決定能力育成論と比較しながら,オールターナティブなあり方を考察している。これらの作業をとおして,旧来の断片的知識暗記型授業でもなく,単なる意見の言い合いでしかない「カラオケ型」討論授業でもない,社会科本来の目的である「公民的資質」育成を実現する授業のあり方を明らかにしようとしている。