自然界の物質を構成する原子は、原子核とその周りを回る電子からなり、原子核は陽子と中性子から構成されます。さらに、現代物理学においては、陽子や中性子といったハドロン粒子は、クォークとグルーオンと呼ばれる素粒子から構成されていることが分かっています。しかし、このクォークやグルーオンはハドロンの中にとても強い力で閉じ込められておりその様子を知ることは大変難しいことも知られています。この奇妙な現象は「クォークの閉じ込め問題」と呼ばれ現代物理学でも最も解くことが難しい課題とされています。
私は、クォークやグルーオンが従う理論である量子色力学の数値的研究により閉じ込め問題の研究を行っています。理論を格子上に再定義することにより、コンピュータ上でのシミュレーションが可能になり、クォークやグルーオンの動きを探ることができます。また、閉じ込め力の存在しない宇宙初期における高温状態におけるクォークグルーオンプラズマの研究も行っています。これらの研究を通じて、閉じ込め問題の解明や量子色力学の深い理解に挑みたいと思っています。