1)濫用薬物であるGHBは死後に体組織中で多量に産生されるため、剖検試料からのGHB濫用証明は困難な場合がある。そこで摂取由来GHBと死後産生GHBとを鑑別するために、GHB産生に及ぼす諸種要因(死因や死後経過時間、病態など)に関する検討やGHBの分析試料として最適な試料の検索を行っている。
2)古くから精神的ストレスと喫煙との間には正の相関関係があることが知られている。法医鑑定に係る中毒検査においてニコチンやその代謝物(コチニン)の分析をすること(=生前の喫煙状況を把握すること)は、例えば家屋火災被害者においては火災原因の究明や身元不明者においては個人識別に有用となるだけでなく、死者の死亡前の精神状態を把握するのに有用な指標となりうる。我々は自殺者の血中ニコチン濃度が非自殺者のそれと比較して有意に高値を示す傾向があることを把握しており、血中のニコチン濃度が自殺と非自殺との鑑別に有用であるか否かについて検討を行っている。